超短編小説ーお菓子ー

奇稿
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ふたりで開けたお菓子の袋。

真新しいパッケージとフワリと鼻孔をくすぐる甘い香りに、我を忘れたかのように飛びつく。

1つ目をそれぞれ手に取って、顔を見合わせると口の中に放り込んだ。

舌の上で転がる甘味は多幸感とともにじんわりと広がって、身体のどこかに溶けた。

そしてお互いにニッコリと微笑む。

 

それから僕はタガが外れたようにお菓子をがむしゃらに食べた。

口の中に頬張っては咀嚼して、咀嚼が終わる前にまた頬張る。

カレーが1週間続いても平気な僕は全然飽きなかった。

けれど彼女は違った。

2口目には笑顔が消え

3口目からペースが遅くなり

4口目には手にとったお菓子を半分だけ噛り

最後は袋に戻した。

 

僕がひたすら貪る隣で

指にねっとりついたその人工的な甘味料をじっと見て、指をペチャペチャと鳴らす。

指から伸びるキラキラした糸は

指を動かす度に重力に耐えかねて、何度も何度も切れた。

彼女の仕草から僕の中でなにかが失せて、袋の口をクシャっと握って閉じる。

彼女は指遊びに飽きたのか、少し経つと徐に立ち上がりどこかへ消えた。

それからどれくらいの月日が過ぎただろう。

1人で再び開けた袋の中身は、あのときの彼女の指そっくりに全てがペチャペチャだった。

手を入れることすら躊躇うほどに。

僕は乱暴にくずカゴめがけて袋を投げると、彼女と微笑んだ場所を後にした。

あのペチャペチャした音はずっと耳元で鳴り続けている。

 

けれどふたりで食べたお菓子の味は、今ではもう思い出せない。

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